読了

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

ロシア52人虐殺犯 チカチーロ [DVD] チカチーロでしたっけ、ロシア(旧ソビエト)で少女が殺された事件がありましたね。高校生くらいで実家にいた時でしたが、母親が借りてきたビデオを一緒に観て、ショックを受けたのを思い出した。小説の舞台は恐怖政治下の旧ソ連。飢えた兄弟が登場するところから始まります。そして山に食料を探しに行った兄弟は悲惨な出来事に遭遇、さらに場面は変わって、兄弟が雪遊びをするところに移る(この辺は小説の舞台と同じ時代)。そして現れる轢死死体。不審な点は多いものの、事故死として処理される。この物語の主人公はレオ(国家保安省の捜査官)で、理想的国家ソ連の「犯罪は存在しない」というプロパガンダを信じきっている人間。警察の仕事は、ほぼ、イコール思想犯を取り締まること、と同義なので、捜査をすることもない。犯人を逮捕するときは、適当に思想犯をでっちあげ、拷問にかけて自白させるのだ。レオはその国家の英雄で、雑誌の表紙も飾る人物。でもふとした裏切りから、英雄から地方の警察官へと左遷。そこで国中で同じような子どもが殺されているということを知る。そこで彼は命を賭け、真相を暴くべく、極秘の捜査に乗り出す・・・。内容はこんな感じですが、上巻は国家の窒息しそうな体制と裏切りなんかがいっぱいで、とても読むのが辛かった・・・。でも下巻に入ってからはスリルがあって面白かった!最後の最後で犯人と過去が暴かれたときはうーん、そうきたかーと思ったけど。
ロシア人しか知らない本当のロシア (日経プレミアシリーズ)

ロシア人しか知らない本当のロシア (日経プレミアシリーズ)

 ちょっと固い話題が多いけど、スーパーの中とかアルコールとか、ロシアで長く生活していないとわからないことがいっぱいで面白い。
嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

 1960年代のプラハ。在プラハソビエト学校に通っている米原さん(本の中では「マリ」)が50カ国もの国からやってきた個性的な友だちとともに過ごした思い出をエッセイにしたもの。政治的な主義主張はあるけれど、米原さんの文章はそんなことに引っ張られずに進む。後半には音信不通になった友達を訪ねていくんだけれど、それも一緒になってどきどきしてしまった。とても良い本。
テヘランでロリータを読む

テヘランでロリータを読む

 テヘランで大学の職を奪われた(といっていいものか・・・)著者が、自宅で禁じられた小説を読む、女性だけの「読書会」を開く。登場人物も仮名とはいえ多く出てくるので、正確に内容を把握するのは正直難しく感じたけれど、監視社会とはどういうものなのかを記録した、貴重な本だと思う。何より驚いたのは「イランの主席映画検閲官は1994年まで目の見えない人物だった」ということ(隣に座った助手が内容を説明し、どこを削除するか決めるらしい)!そんなのって、あるだろうか・・・。この本に描かれている間でも、国民に対する抑圧は強くなったり、弱くなったりして安定しない。それでも人は戦火に怯えつつ、こんなにも記録をするんだな・・・ときりきり胸が痛くなる。

 あらゆるおとぎ話は目の前の限界を突破する可能性をあたえてくれる。そのため、ある意味では、現実には否定されている自由をあたえてくれるといってもいい。どれほど過酷な現実を描いたものであろうと、すべての優れた小説の中には、人生のはかなさに対する生の肯定が、本質的な抵抗がある。作者は現実を自分なりに語り直しつつ、新しい世界を創造することで、現実を支配するが、そこにこそ生の肯定がある。あらゆる優れた芸術作品は祝福であり、人生における裏切り、恐怖、不義に対する抵抗の行為である。私はもったいぶってそう断言してみせた。形式の美と完璧が、主題の醜悪と陳腐に反逆する。だからこそ私たちは『ボヴァリー夫人』を愛してエンマのために涙を流し、無作法で空想的で反抗的な孤児のヒロインのために胸を痛めつつ『ロリータ』をむさぼり読むのだ(p,73)。