読了

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

 北海道のちいさな町で暮らす、奇妙に美しい男女のお話。しんとして、暗い、湿度のある作風は相変わらずすてき・・・。色んな人の視点でも書かれているので、それぞれの登場人物が感じている人生の哀しさだったり、ぽっかり空いた穴だったり、後悔が積もるみたいにして物語が進んでいく。最後のシーンもぎゅうーっと締めつけられるみたいだった。とはいえ、会話のテンポも良くて読むのが楽しかった!私は主人公の七竈と後輩の話しっぷりが大好き。
ニッポンの犯罪12選 (幻冬舎文庫)

ニッポンの犯罪12選 (幻冬舎文庫)

 大学院のとき少年犯罪をテーマにしていたこともあって、未だに目に付くと(さくっと読めそうなものが見つかると、とも言う・・・)買っちゃう。あとがきで太田さんも書いているように、こういうテーマは軽いテンポで書くにも限界があるな、と読んでいても感じるところが多かった。それこそ、江戸時代の話(石川五右衛門とか鼠小僧とかね)は私たちも距離を感じて遠い物語のように読むけれど、パリの人肉事件とか、金属バット事件とかは気分が悪くなるくらい。でも現実に起こったことなので、軽いも重いもなく、そのままの事実が事件の重さなんだろうな・・・。太田さんは最後にこういう感想を書いているけど、これは私が自分のテーマを決めるときに感じたことそのままだったので、今回読んだことで初心を再確認できました。人と人とを分けるものなんか何もないんじゃないかと思ったら怖すぎて、不安でしかたなくて、研究テーマにして解き明かしてやるー!って気持ちだったな・・・*1

 それぞれの犯罪を詳しく知れば知るほど、募っていったのは、人間が、その中に持っている暗黒面に一歩足を踏み入れてしまう瞬間の恐ろしさ、そして、人間自身の危うさに対する思いだ。我々は誰もが、ここに挙げた犯罪者たちと同じ暗黒面を自分の中に持っている。少し気を緩めればその暗黒面に足を踏み入れてしまう可能性が誰の中にもある。罪を犯すのと犯さないのは、ほんの紙一重の違いなのではないかと感じる(p.219)。

あと、いつもこれを思い出してた。ニーチェだったっけ・・・。

怪物と戦う者は、その際自分が怪物にならぬように気をつけるがいい。長い間、深淵をのぞきこんでいると、深淵もまた、君をのぞきこむ。

*1:他にも理由はたくさんありますが、あくまでそのひとつとして。